2018年06月17日

慣れていない世代

どもの頃の我が家が祝う記念日といえば、せいぜい誕生日くらいだった。大正生まれの父はクリスマスでさえ「外国のお祝い」と決めつけて盛大にはやらなかったし、父の誕生日に弟と小遣いを出し合って贈ったヘアドライヤーを見て開口一番、「毛がねえとにこげなもん買うてもったいねぇ!」。プレゼントを贈られることに慣れていない世代である。


「ほれ。父の日」
「なん?」
「骨粗しょう症防止」
「え〜、今日は父の日か」

朝、起き抜けの父に「骨ケア」のドリンク剤を届けると、受け取りはしたがそのまま飯台にポイと置いた。

「プレゼントもろぉたらすぐに開けてみらんといかんが」
「なん?」
「じゃから、骨が折れんごと飲むドリンク剤よ」

袋から出して僕らの名前を書いた小さなノシを丁寧に剥がすと、10本入りのドリンク剤を1本取り出した。遠近両用のメガネの下側を使ってしかめっ面で効能を読んでいる。

「え〜、骨が折れたらでじじゃもんな」
「そうよ。足でも折れたら寝たきりど」


OPF02450.jpg


取り出したドリンク剤を箱に戻すと蓋を閉めた。嬉しくないのだろうか。無表情だ。

「これ。彩さん(妻)が選んで買うてくれたっちゃからな」

僕は少々モヤモヤした気分で帰り際にそれを伝えると、父の表情がガラリと変わった。

「お〜〜、彩さんが。買うてくれたとか」
「そうじゃが」
「え〜〜、そら『ありがとうございました』って伝えとってくれよ。ありがとうー、って」


なんじゃそれ。嫁が買ってくれたプレゼントなら大喜びするっちゃ。ま、なんでもいいけど。髪の毛より大事な骨のケアは高齢者にとって重大な問題だ。


父はもう一度箱を開けてニコニコしながらドリンク剤を眺めている。









posted by オガワタカヒロ at 23:33| 宮崎 ☔| Comment(0) | 家族 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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